-->
in まやかし婚

まやかし婚157

-2 COMMENT




俺と牧野は、リビングをガキのように走り回った。
そして、俺は―――――。
キャーキャーとガキのように楽しそうに笑いながら走る牧野の肩を掴み、俺の胸の中に閉じ込めた。

俺は、牧野の手首と腹部だけは絶対に触ねーって決めていた。
あいつの肩を掴んだ理由は、たった1つ。

あいつの手首と腹には、あの悪徳闇金業者の男たちによって酷く痛めつけられた痕があるからだ。
内出血で皮膚の色がひでーくらいに変わっているのを、俺まで傷つけたらどうするんだって思いがあったからだ。

俺が触れることで、あの日の恐怖を思い出させたくなんかねー。
せめて、このひでー内出血が完全に治るまでは。



俺の胸の中に閉じ込めた牧野は、どこもかしこもフワフワしていて、スゲーやわらけぇ。
なんでこんなに細いのに、こいつはこんなにやわらかいんだ?

牧野がやわらかいからなのか?
俺の体に完全にフィットしている。
こいつの体温が心地いい。

そして、牧野から聞こえてくるバクバクと動く心臓の音。
俺と同じくらい早い。
俺の耳に聞こえてくる、二つの音。
こいつの心臓の音すら、俺にとっては愛おしい。

こんな思いは、今まで誰に対してもしなかった。
こいつだから・・・。
牧野だから、こんな風に思うんだ。

もう二度と、あんな男たちには触らさせねーよ。
俺以外の男に、触れさせなんかしねー。

俺は、もう―――――。
こいつの未来の本当の旦那になんて遠慮なんてしない。



俺がずっと言えなかった滋とのことを伝えた。
「滋との報道。あれは全部ウソだ。」

俺の言葉と同時に、牧野から伝わる体の強張り。
滋との報道が出た時も、俺が滋との話をしようとする度に、はぐらかされた記憶が蘇る。

少しくらい期待していいのか?
お前も俺のこと、少しくらい思ってくれているのか?

こんな期待と同時に抱く不安。
俺のことを少しでも思ってくれているのなら―――――。

俺に少しくらい体を預けてきてもいいんじゃね?だとか
少し前まで、俺の腕から逃れようとバタバタしていた牧野に不安を感じる。
こいつはマジで、未来の本当の旦那との将来しか考えてねーのかもしれない。

それでも、言わねーと始まらねー。
もしかすると、完全に気まずくなってしまうかもしれねーけど。
気まずくなったとしても、俺は牧野を諦めねーし、誰にも渡さない。

あの男たちに連れ去られそうになった時に感じた恐怖は、二度としたくねー。
それが、悪徳闇金業者でも、こいつの言う未来の本当の旦那でも―――――。
俺から牧野を奪い去っていく奴は、俺にとって誰でも同じだ。



俺は、自分の気持ちを伝えようと決心した。
この決心と同時に、俺は牧野を今以上に強く抱き締めた。

これ以上、強く抱き締めると牧野の肩の骨を折ってしまうってくらいに抱き締めた。
そして、牧野の髪の毛に俺の頭をうずめた。

この瞬間、牧野の甘い香りに包まれる。
頭の奥がしびれるような幸福感。




俺が、人生初の告白をしようとした時―――――。
このペントハウスに、俺が初めて聞く音が響き渡った。

なんだよ、この音。
電話から鳴り響いている。

誰だよ?
こんな時に、不快な音を鳴らすんじゃねー。

俺は無視しようとした。
が、俺の人生初の告白を邪魔するかのように、電話は鳴りやむことはなかった。

「電話・・・。」
牧野の声が届いた。

他の奴なら気付かねーかもしれねー。
でも、俺にはわかる。
こいつと一緒に住んでいるからこそわかる。

牧野の声がいつもと違う。
どこか不安を感じているような、困ったような声。
この牧野の声で、俺はハッとした。

こいつは、数日前、あの男たちに連れ去られそうになったんだぞ!
怪我をして退院したばかりの牧野に、俺は何をしているんだよ!

俺の気持ちばかりじゃねーだろ!
バカか?俺は。
俺がこいつを不安にさせてどうするんだよっ!

「わりぃ。」
俺は牧野を抱き締めていた腕を緩めた。








お読みいただきありがとうございます。
にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村
関連記事

2 Comments

There are no comments yet.
まぁこ
は〇様

まぁこ

実は、うちも一番上だけを・・・と思ったりもしたんです。
が、いろいろ考え一家で引越ししてしまいました。
本当に大騒動でした。
年末から少しずつしていた引越しだったのに、どうしてこんなに段取りが悪いのかって笑ってしまいました。
そして、は〇様のコメントを頂き、すっかり忘れていたのですが・・・。
私も学生時代にその方法で引越ししたと思い出しました。
往復も大変ですよね。お疲れ様でした。

いつもなのですが、隅々まで読んで頂きありがとうございます。
は〇様から頂いたコメントを読ませてもらいながら
『あー、ここ!私も気に入ってます(^^)』
なんて思っている所なので嬉しいです。
いつもコメントをありがとうございます。

  • 2021/04/06 (Tue) 15:41
  • REPLY
-

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

  • 2021/04/05 (Mon) 16:55
  • REPLY