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in まやかし婚

まやかし婚129

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無断外泊をしたこの日ですら・・・。
俺が帰宅しても牧野の態度はいつもと一緒だった。

何が《つくしちゃんがヤキモチ妬く作戦》なんだよ。
全くじゃねーか。
滋との報道のことも、俺の無断外泊も、
牧野にとっては、全く関係ないことだったのが証明されただけだった。

文句の1つでも言ってもらいたい。
嫌味の一言でも言ってもらいたい。

正直、言ってもらいてーって気持ちがあった。
が、牧野からは何も言われることはなかった。

俺に何も言うことなく、幸せそうに、美味そうにメシを食っている牧野を見て、
俺は、散々悩んだが・・・。

自分でどうしようもできねーくらい、デカくなった牧野への想いを抑え込むことに決めた。
牧野を契約通り、未来の本当の旦那に送り出すことを決めた。

結局、この数日。
俺がどれだけ悩み考えても、最終的には同じところにいきつく。
きっと、これが一番正しんだ。
スゲー辛くても、牧野の幸せを、牧野がどこかで笑っていることが一番なんだろ。

なんていっても、家族の為に・・・。
自分の人生と夢・戸籍に傷をつけてまで、俺と結婚するくらいのお人好し女なんだからな。







どんなことがあっても、どんなに辛いことが起こっても――――――――。
あのパパの衝撃的な闇金事件の時と同じように。

時間だけは誰も裏切ることはなく、平等にやってくる。
幸せな人にも、不幸な人にも
お金持ちにも、貧乏人にも
どんな人にも、世界中の人に、時間だけ、これだけはみんな平等。

辛くて、気持ちが死んでいるような私にも、月曜日がやってくる。
先週のあの魔の金曜日と違って、今日は報道陣が1人もいない。



私は、この数日も仕事に追われた。
仕事をしていると、道明寺のことを考えなくて済む。

営業部や海外事業部への新しいサポートも始まった。
いつの間にか、私が担当している仕事も増えてきた。

こうして、辛い気持ちも薄れていく。
はずなんだけど・・・。


一番の問題は――――――――。
道明寺と私が、今は期間限定でも夫婦って事が問題よね。

仕事に集中して、昼休みや仕事後に笑って過ごしても、家に帰ると道明寺が帰ってくる。
今の私の家が、道明寺の家だから仕方ないことなのかもしれないけど。

あの無断外泊以来、道明寺は毎日帰ってきている。
こんな状態になったんだから、毎日帰って来てもらわなくってもって思ってしまう。

余計なお世話かもしれないけど・・・。
大河原さんだって、良い気はしないと思う。

契約結婚とはいえ、一年だけって決まっているとしても。
自分の好きな人が、付き合っている人が他の女の人と一緒に暮らしているなんて。
私なら耐えられないよ。
気持ちが通じていても、絶対に辛いと思うんだけどな。

私も、年が明けたら・・・。
道明寺との契約が終わって、あいつが大河原さんと結婚したら辛く思うのかな?
でも、道明寺が幸せなら、そのほうがいい。


9月最終の金曜日。
営業部にお邪魔していた時に、織部くんから珍しく念押しで頼まれた仕事。

庶務に戻り、目を通していたら次のページに貼られた鮮やかな黄色の付箋。
《今日、メシに行きませんか? 織部》
こんな文字の下に《YES・NO》と書かれていた。

この付箋があったから、
「絶対に牧野さんがしてくださいね~。」なんて言っていたんだ。

家に帰っても、道明寺が帰って来る。
私が毎日、決まって帰るから・・・。
あいつも義務的に帰らないと、帰れなければいけないと思ってくれているのかもしれない。

道明寺に言ってあげたい。
契約で一緒に暮らしている私に、そんなに気を使わないでって。
大河原さんと会いに行って良いんだよって。

なんで、私は・・・。
こんな風に、思っていることを道明寺に言わないんだろ?

辛いから?
もしかして、無意識で道明寺に対して意地悪をしているのかな?
ニセモノの夫婦だから、肝心な会話をしないだけなのかな?

私は、嫌な考えを吹っ切るように頭を左右に振った。
そして、織部くんが貼ってくれていた付箋の《YES》の文字の上に〇をして、仕事に取り掛かった。



この日の夜、仕事が終わった織部くんと向かったのはイタリア風の居酒屋。
前と同じように、織部くんは私にソフトドリンクを進めてきた。
でも、私は初めてお酒を頼んだ。

きっかけは、織部くんの言葉。
「酒って、嫌なことや辛いことを忘れられるんですよね。楽しくなる。」
「仕事でミスした時とか、疲れた時に飲むと最高ですよ。」

《嫌なことや辛いことを忘れられる》
この言葉に惹かれた私は、織部くんが選んでくれたお酒を飲んだ。

織部くんが選んでくれたお酒は、甘くておいしかった。
その上、織部くんが話してきてくれる、地元の話や仕事の話が楽しい!

確かに、気分がいいかもしれない。
ずっとニコニコ笑っていられる。

嫌なこと、道明寺のことが薄れた。
この時だけは、道明寺への気持ちが薄れた。
ずっと、突き詰めて苦しくなるほど考えていたけど、楽になった。


本当は、織部くんとご飯に行くって決めたのは自分なのに、
終業時刻になって織部くんとお店に入るまで、ずっと道明寺への連絡をどうしようって思っていた。

帰りが遅くなるって連絡していない。
でも、いいよね~。
大人なんだから大丈夫だもん。

あいつの夜ご飯も作っていない~。
でも、いいよね~。
勝手になにか食べるでしょ。

無断外泊より、マシよね~。
それが、こんな風に思えるようになっていた。
お酒ってスゴイ。

ウフフ。
私は、初めて飲むジュースのように甘くて美味しいお酒を楽しんでいた。







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