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in まやかし婚

まやかし婚128

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無断外泊した。
あいつと一緒に住むようになって、初めて別に過ごす朝。

メープルのシェフが準備した豪華な朝食も、俺にとって興味がない。
食欲が全くない。沸かない。
それどころか、牧野だったらこの朝食を見ると―――――
目をキラキラさせて喜ぶんじゃねーの?

牧野は、今どんなメシを食っているんだ?
昨日の夜は、どうしたんだ?

牧野をペントハウスで一晩、一人にしてしまった。
しかも、俺の自分勝手な都合で。
連絡もしねーで。

あの不必要に広いリビングで、一人でメシを食う牧野が頭に浮かぶ。
俺、スゲー悪いことをしてしまった。

俺のメシ、どうしたんだ?
いつもの俺の場所に、準備されたであろうメシ。
牧野が、俺の為に作っただろうメシのことまで気になりだす。



俺は、溜息をつきながらスーツに着替え出社する。
メープルから出社するなんて、あいつと暮らすようになって初めてのことだ。

正直、あの報道以来。
仕事に関しては、全く頭に入ってきていない。
牧野のことを好きだと自覚するまでは、西田の指示でなんとかしていた仕事だった。

それが、牧野を好きだと気付いて、あいつに少しでも認めてもらう為に――――。
頑張るようになった仕事は、俺が今までダラダラとしていた仕事とは違うように思えた。
やりがいや手応えを少し感じだしていた。
が、今は・・・。
前の状態の俺ほどじゃねーけど、ただ目の前の仕事を消化しているだけとのモノなっている。

いつもなら、俺に対して痛烈に、遠慮も全くしねーで文句を言ってくる西田。
その西田ですら、滋との報道以降は冷たい目線を送ってくるだけで、一切何も言ってこねー。

無断外泊についても一切何も言ってこない。
いつもなら、俺のことをボンクラだとか直球で言ってくるのに、
なんで俺が史上最大に困っている時に、何も言ってこねーんだよ!

どうやら、俺はそんな顔をしていたらしい。
西田は、書類を俺に渡しながら話し出した。

「バカにつける薬は無しです。」
西田は俺に、書類をウザそうにしながら渡してくる。
あ?なんつった?

「バカは死んでも直らないとは、本当だったんですね。」
西田が、俺を憐れむように言ってきた。
どうやら、西田はあきらから全てを聞いているようだ。

そして、気持ちわりぃ笑顔を浮かべながら
「いやー。どうなるかと思っていた司様の初恋でしたが、案外早くに決着がつきましたね。失恋の痛手を忘れるには仕事です。さ、本日の予定はタブレットの方へ送信しましたので目を通して下さい。」
こんなことを、嬉しそうに言ってきた。

失恋?
失恋なのか?
牧野を、あいつの夢だった教師の男へ送り出すことが?

そして、西田は続けた。
「ご用件がありましたら、隣の部屋にいますがリモートでご用件をどうぞ。」
あ?リモート?
なんで隣の秘書室にいる西田とリモートなんだよって、思っていると

「司様の近くにいると、幸せいっぱいの私の運気まで下がってしまいます。」
こんなことを、西田はスゲー嬉しそうに言いながら秘書室へ戻っていった。

その時に、なんとなくだが・・・。
『司様の不幸は蜜の味~。』っつーのを、嬉しそうな足取りの西田が小声で言ったような気がした。

やべぇ。俺、疲れているんだな。
幻聴だ。
幻聴が聞こえだした。
マジで聞こえたのか?

いや、さすがにあの毒吐きの西田でも・・・。
俺の不幸が蜜ってねーよな。




今になってスゲー反省してる。
無断外泊。

牧野が無断外泊したら―――――
俺は絶対に、一睡もできねー。
いや、夜中でも探しに行くはずだ。

こんなにまで想っているのに、なんで牧野にドス黒い思いを抱いたんだよ。
何をやってるんだよ、俺。

―――――!!!
俺は、何の為に無断外泊をした?

アイツの前で醜態をさらせねーって思ったんじゃなかったのか?
アイツへの想いを、断ち切ろうとしたんじゃなかったのか?
牧野の言う未来の本当の旦那様に、あいつを送り出そうと思ったんじゃなかったのか?

一晩なんかじゃ、足りねー。
割り切れるわけなんかねーんだ。
俺が思っている以上に、俺の中での牧野の存在はデカかった。

牧野の前で、醜態をさらした方が良かったんじゃねーか?
俺の気持ちに少しでも気付いてもらった方が良かったんじゃねーか?

なんで、俺は肝心な事を牧野に言わないんだ?話さなんだ?
赤札の謝罪が終わってないのが、気になるっつーのもある。
滋との報道にしたって正直に話して、滋のように笑い話にしても問題が無いはずだ。
滋も、そんなこと気にしねーはずだ。

いや、違う。
あいつが、少しでも俺のことを思ってくれているのなら・・・。
言えるかもしれねー。
素直に、何もかも。
俺の想いも。
でも、牧野の心にいるのは、俺じゃねーからだ。

どうしたらいいんだよ?
自分の気持ちと、牧野がずっと想い描いていた教師との結婚。

頭のなかでは、牧野の気持ちを優先させるってことがわかっている。
わかっていても、牧野への想いが俺の中で、どうしようもねーほどデカくなっていた。


牧野が、この俺の気持ちを知ってしまったら。
考えなくともわかる。
牧野が困る―――――――――。

俺は、この気持ちを隠し通すと決めた。








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