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in まやかし婚

まやかし婚52

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「ね、結婚式はつくしちゃんが花嫁修業をしてからって聞いたんだけど。」
姉ちゃんが俺の気持ちとは裏腹にスゲー嬉しそうに聞いてきた。

「今日は司の誕生日で入籍記念日なんだから記念撮影しましょうよ!」
姉ちゃんの声に、俺と牧野は一瞬ポカンとした。

「大丈夫、西田から聞いているわ。しばらく秘密で一年後に発表ってことも。だから、私が撮るわ!」
さっきから姉ちゃんだけが話している。

牧野だけが小声で
「えっ?」
だとか
「写真?」
とか
「なんで?」
って言っているのも姉ちゃんには届かねぇ。

こうなった姉ちゃんは他の奴の意見なんて聞いてなんかいねーからな。
親父もババアもこの展開を嬉しそうに見ている。




ここからが凄かった。
俺は初めて、親父があまり仕事をしねーでゴルフにばかり行くのかがよくわかった。

牧野のドレスは、なぜか西田からサイズを聞き出していて(なんで西田が知っているんだ?)
ババアと姉ちゃんが、牧野に合いそうなドレスを数点選んで奥の部屋に運んでいた。

その中から牧野が気に入るを着させるつもりだったらしい。
ババアと姉ちゃんが牧野にドレスの特長や自分の気に入ってるドレスのセールスポイントを捲し立てるように話し出した。

「俺のは?」
俺の言葉に、
「あんたは部屋に置いてるのがあるでしょ?適当にさっさと着なさいよ。」
姉ちゃんは、この言葉を言ったあと俺の背中を押して追い出した。

ドアを閉める直前に
「スーツじゃダメよ。タキシードだから。」
っつー言葉がババアから飛んできた。

なんか、ババアも姉ちゃんもスゲー張り切ってなかったか?
牧野は大丈夫か?
嘘だけはバレるなよ、俺は心の中で祈った。






俺がタキシードに着替え、
奥の部屋を気にしながらコーヒーを飲んでいると
「司はマダマダだな。」
こんな親父の声に顔を上げると同時に、また親父が話し出す。

「女性を待つ時は、待つという感覚を無にして待つ。」
あ?
待っているのに、待つという感覚を無にして待つってなんだよ?

ボケ出したのか?
仕事もしねーでゴルフばっかりしてるからじゃねーの?
親父は俺よりも仕事してねーんじゃねーか?

「ちなみに。あきらくんにも昔、言ったことがあるんだが。」
あ?何をあきらに言ったんだ?

「これから司もつくしさんと、喧嘩をする時も意見が違ってくる時もあるだろう。」
黙っている親父が俺に言ってきた言葉が

「そんな時は、謝っていると思わないで誠心誠意謝りなさい。それが夫婦円満の秘訣だ。絶対に歯向かうな。歯向かったら最後、長引くだけだ。」
なんなんだ?何を急に言い出してくるんだ?

「後で後悔するんだよ。あの時に、嘘でもいいから謝っておいたら良かったと。」
親父は、そんな思いをしていたのか?
嘘でもいいから謝れって、どうなんだ?

少し親父を可哀想に思う。
ババアは鉄の女って異名があるくらいだからな。
家庭でも鉄の女だったってことか。

「むちゃくちゃ怖いぞ、女は。怖いだけじゃない、強い、強すぎるんだ。そして、タフだ。」
確かにババアは強いよな。

「守ってやりたいなんて思うのも今だけだ。結婚して子供が産まれたと同時に、男なんて蚊帳の外。」
俺が黙っているのをいいことに親父はずっと話し続ける。
カヤってなんだよ?

「お前が産まれた頃には、家族と言うのは楓・椿、司の三人を表すようになった。」
あ"?なんなんだ、それ?

「家庭に居場所が無くなった私は仕事に居場所を見出した。」
そうだったのか?
親父がそんなんだから、俺と姉ちゃんがガキの頃あの邸に二人だけにされたんじゃねーの?

「その仕事も楓に場所を取られてしまった。」
親父はまだ話続ける。

おい、俺と姉ちゃんのガキだった頃の思いはどうなるんだ?

「だから私はゴルフに居場所を見つけたんだ。ヘタだけどな。」
おいっ!!
ババアが仕事を始めたのは、親父のゴルフの為か?

「仕事半分、ゴルフ半分ってのが一番だ。で、お前はいくらで回るんだ?」
急に親父は、ウキウキとした口調で話し出した。
なんで、俺がゴルフを始めたことを知っているんだ?

「あ?俺。どっちも40くらいだな。良いときは前半、悪いときは40後半。」
俺の返事に

「お前、すごいじゃないかっ。アマチュアになるか?プロ、目指すには遅いか?俺としたことがっ!お前にそんなゴルフの才能があったなんて。」
こんなことを興奮して話し出す。

「バーディーやイーグルか?いいなぁ。」
親父がエアゴルフをしながら言い出した。
言えねーけど、ダブルボギーも普通にあるぞ。

俺がゴルフ選手になったら道明寺はどうなるんだよ?
悪い時は50以上叩くっつーのは絶対に言わねぇ。
ゴルフは俺の方が上って思いこませとかねーとな。

酒を飲みだしても、仕事を始めても、親子らしい会話なんて今までになかった。
まさか、この年になって親父と共通の話題が出来て話すなんて思いもしなかった。

「仕方ない、孫をプロにするって手もあるな。孫とゴルフ教室通うダンディな父親に見えるおじいちゃんになろう。つくしさんは可愛いから、可愛い孫が産まれるぞ!夢はマスターズに全英オープンだ。楽しみだな!!」
親父は、スゲー嬉しそうにこんなことを言ったんだ。

正直、こんな嬉しそうな親父の顔を見たのは何年ぶりなんだって思った。
俺がガキの頃、俺に会いに来た時に見たのを思い出した。

姉ちゃんにガキが産まれるかどうかは知らねーけど。
牧野に親父の孫を産んでもらことはねー。
親父とババアの影響で俺は俺の遺伝子を残すつもりは無い。

そして、珍しく話す親父が言い出したこと。
「楓が喜んでいたよ。お前が好きな女と結婚することを。」

俺は、親父の顔をガン見した。
「親の選んだ相手じゃなく、自分で社内恋愛してつくしさんのような良いお嬢さんを好きになってくれたって、とても喜んでいたよ。」
親父は嬉しそうに俺に言ってきた。


こんな親父の顔を見て、俺は――――
牧野の家に挨拶に行った日
牧野が辛そうな今にも泣きだしそうにしていたのが、少しだけわかったような気がした。







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